グルーブドタイヤ (grooved tyre)とは、1998年から2008年までフォーミュラ1 (F1) で用いられていた、円周方向に4本の平行な溝を持つタイヤ。grooveとは英語で「溝を掘る」の意味。
1997年、グッドイヤー1社だったF1のタイヤ供給にブリヂストンが参入すると、「タイヤ戦争」と形容される開発競争によりタイヤ性能は著しく向上し、ラップタイムも短縮された。国際自動車連盟 (FIA) は車両速度を抑制し安全性を向上させるために1998年よりスリックタイヤに代わりグルーブドタイヤを導入した。グルーブドタイヤは、トレッドの円周方向に溝を配することで接地面積を減らし、グリップ力を低減してコーナリング速度を低下させる。溝は深さ2.5 mm、幅はトレッド表面で14 mm、50 mmの間隔を空けて前輪に3本、後輪に4本設けられた。翌1999年にはなおも向上する車両性能に対応して前輪の溝を1本増やした。2009年、性能抑制を空力面の大幅な制限により行い、代わってオーバーテイクを容易にする目的でスリックタイヤは復活した。
グルーブドタイヤの溝は複数の面でタイヤ性能を低下させた。
- 接地面積減少によりグリップ力が低下した。
- トレッドの見かけ剛性の低下により、アンダーステアの発生や、コーナリング中の挙動、操縦安定性に悪影響を及ぼした。
- コーナリング中の接地圧分布が悪化し、溝のエッジ部分の負担が非常に大きくなり急速に摩耗する「メクレ摩耗」により、摩耗寿命が大幅に悪化した。
グルーブドタイヤの導入によってラップタイムをおよそ3秒低下させたと見込まれている。
脚注
参考文献
- ブリヂストン 編「2.3 レース用タイヤ」『自動車用タイヤの基礎と実際』山海堂、2006年。ISBN 9784381088567。
- 浜島裕英「レーシングタイヤの要求特性」『自動車技術』第54巻第2号、自動車技術会、2000年、53-57頁。
- 浜島裕英「モータースポーツ用タイヤの開発」『自動車技術』第63巻第10号、自動車技術会、2009年、73-78頁。
外部リンク
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